罪の告白は正しい方向に踏み出すほんの小さな一歩にすぎない。ナイキの報告書が出てから六ヵ月後に、貧困撲滅をめざす国際NGOのオクスファム・インターナショナルが、インドネシアでナイキ製品を作っているフルタイム労働者の月給が五六ドルそこそこであることを突き止めた。その年、この国では法定最低賃金が引き上げられていたのだが、物価も上がっていた。だから、労働者の稼ぎ自体は一年前より多かったにしても、食べ物や燃料といった生活必需品に出て行くお金のほうも増えていたのだった。報告書の中で、ナイキは、企業が労働者から搾取して大儲けしているという疑いを打ち消そうともしている。一般的なナイキのシューズの場合、価格の最大七〇%が材料費だというのだ。さらに、会社としては、税金やデザイン料、リサーチ料、管理費などといった日常的なビジネス・コストに加えて、輸送や関税、保険などの支払いをしなければならない。だから、一〇〇ドルの靴を作る労働者が一ドルしかもらっていないのが事実だとしても、会社重役が残りの九九ドルを丸々せしめているのではないというのである。しかし、だからといって、大企業が労働者のために損を被っているというのも当たっていない。『クラリアント』誌二〇〇一年二月号の記事によれば、ファッション・ブランドの粗利潤(顧客が製品の製造費に加えて払う額)は通常六〇%を超えるという。コンピュータ(通常二〇〜二五%)、携帯電話(三〇〜四〇%)、ファスト・フード(二〇〜三〇%)の粗利潤に比べれば、結構な数字である。変わって、五ヵ国の工場ネットワークでヘインズなどのアクティブ・ウェア・ブランドの製造を行うサラーリー。ここでは、下請各社向けに〈グローバル・ビジネス・プラクティス〉なる労働慣習の必要条件を設定し、それを満たしていることを証明する契約にサインさせている。そして、スタッフが時たま抜き打ち検査を行うのだ。「問題のある行為が明るみに出た場合、製造契約は無効となり、別の施設に拠点を移すことになります」。サラーリーの企画・在庫管理担当副社長のデュアン・ハマーが言う。これは、理論上はいい政策かもしれない。しかし、労働権利問題の活動家が論ずるように、メーカーが工場のとっかえひっかえを続けたところで真の問題解決にはつながらない。製造拠点を移せば、工場主を罰することにはなるだろうが、同時に労働者の仕事を奪って彼らを困らせることにもなるのだ。しかも、次にやってくるメーカーがさらにしみったれだところだったら?