子どもの教育で一番大切なことは、自然に勉強に向き合える「環境」をつくることです。子ども自身が自発的に、楽しんで勉強をする環境を整えてあげること。それが子どもを持つ親や教師にとって、最も本質的で重要な責務だと思います。この件で過去に、ある俳優さんと激論になったことがありました。その俳優さんが私の大学の先輩ということもあって、子どもたちを集めて、彼を招いて討論会をしたことがあったのです。そのときに私は「環境さえ変えれば、子どもたちの能力というのは伸びるはずだ」と主張したのですが、その方は「DNAで学力は決まる」と主張されました。どちらが正しいのかは分かりませんが、私は「環境が学力を決める」という信念で、教育の仕事に取り組み続けています。ここで述べる「環境」とは、親の子どもへの接し方であったり、または子どもの友人関係であったり、子どもを取り巻く世問の人々であったりと、子どもが生きる世界すべてのことを指します。対人関係だけではなく、子どもが見るテレビ番組や、読書体験、スポーツやそのほかの経験すべてを含みます。そういった人間関係や子どもに刺激を与えるあらゆる経験から、子どもの中の判断軸や考え方といった「生きていく上での基礎」が形成されます。子どもの学力はもちろん、将来仕事をするときの能力や、学ぶことへのモチベーションそのものが環境の中で培われると思います。それゆえに私は、個々の教育諭や学習テクニックについては、「こうでなくてはならない」という特別なこだわりはありません。脳科学や認知心理学の最新の成果に基づき、口々「効率的な学習法」について研究を続けていますが、本質的に大切なのは子ども白身が「勉強をすることの喜び」を自分のものにすることだからです。